tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『陽気なギャングの日常と襲撃』伊坂幸太郎

陽気なギャングの日常と襲撃 (祥伝社文庫)

陽気なギャングの日常と襲撃 (祥伝社文庫)


<伊坂幸太郎ブームは彼らが作った――史上最強の天才強盗 あの4人組が帰って来た! 4つの奇妙な事件と銀行襲撃の裏に…… 文庫化記念ボーナス短編付き!>
嘘を見抜く名人は刃物男騒動に、演説の達人は「幻の女」探し、正確な体内時計を持つ女は謎の招待券の真意を追う。そして天才スリは殴打される中年男に遭遇 ――天才強盗四人組が巻き込まれた四つの奇妙な事件。しかも、華麗な銀行襲撃の裏に「社長令嬢誘拐」がなぜか連鎖する。知的で小粋で贅沢な軽快サスペンス!文庫化記念ボーナス短編付き!

映画化もされた『陽気なギャングが地球を回す』の続編です。
あの個性豊かな4人組銀行強盗たちが帰ってきました!!


やっぱりこのシリーズは面白くて好きだなぁ。
伊坂幸太郎さんの作品はユーモアのある語り口に重いテーマが隠れていたりして、そういう読み応えのある近年の作品も好きなのですが、エンターテイメントに徹していて、頭の中を空っぽにして楽しめるこういう作品もすごくいいと思います。
主人公たちは銀行強盗犯で、銀行強盗の場面も描かれますが、ウィットの効いたやり取りや個性的で味わいのあるキャラクターが面白くて、ちっとも悪人という感じがしません。
むしろ人間臭くてちょっと間の抜けたところがあって、親しみさえ覚えます。
嘘を見抜くことができるとか、スリが得意とか、演説が得意(?)とか、1秒の狂いもない体内時計を持っているとか、4人それぞれにちょっとした特技というか能力もあり、それがまた話の面白みを増すのに一役買っています。
それから、「巨人に昇れば、巨人より遠くが見える」といったような、意味が分かるような分からないような微妙な格言めいた言葉の数々も面白いです。
この独特の言語センスと台詞回しが伊坂作品の大きな魅力の一つです。


今回は前半の第一章で4人組の日常を描き、後半の第二章〜第四章である誘拐事件を描くという、ちょっと変わった形の長編作品となっています。
第一章は私の好きな日常ミステリ形式で、個人的にとても楽しめました。
そして、この第一章で解かれた謎が後半の誘拐事件に関わってくるという展開も私好みでした。
伏線張りまくりの小説が好きなんですよね。
この人物がここに関わってくるのか!といったような意外なつながりがたくさんあり、大いに楽しめました。
「ギャング」が主役だからと言って派手なアクションシーンがあるわけでもないのですが、ラストは痛快で爽快感がありました。
文庫版ボーナストラックの「海には、逃がしたのと同じだけのよい魚がいる。」ではいつもの4人組が珍しく(?)小さな人助けをしていて、そのチームワークのよさと結末の清々しさがとてもよかったです。


このシリーズ、ぜひさらなる続編を書いて欲しいなぁ。
また陽気なギャングたちに会いたいです。
☆4つ。