tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ドリームバスター2』宮部みゆき

ドリームバスター2 (トクマ・ノベルズEdge)

ドリームバスター2 (トクマ・ノベルズEdge)


今回のD・Pは、二十歳の新米OL村野理恵子。けっこうな美人なのに気が小さくて自信が持てず、いつだっておろおろ。首をぐらぐらと動かしてしまうのは、不安なときの悪い癖。そんな彼女が、たまたま殺人事件を目撃したことをきっかけに、惑星テーラから逃げ出した凶悪犯につけこまれ、悪夢に悩まされるようになった。理恵子の夢に出現したシェンとマエストロは、いかにして彼女を救うのか…。長篇「目撃者」ほか、シェンの友人である謎のキャラクター、リップとの “別れ”を描く、中篇「D・Bたちの“穴”」を収録。宮部みゆきの大人気アクション・ファンタジー巨篇、第2弾が登場。

1巻は「序章」という感じで「ドリームバスター」の世界やシェンたちメインキャラクターの紹介に終始した感がありましたが、この2巻からいよいよ本格的に物語が動き始めました。
シェンとその師匠であるマエストロの過去、ドリームバスターたちの仕事や生活の様子などが前作よりもより具体的に描かれ、気になるキャラクターも登場して面白くなってきました。
特にシェンの友達で失語症のリップは、大きな謎を残したままシェンの前から姿を消してしまい、おそらく今後のストーリーにも大きく関わってくることになるであろう気になるキャラクターです。


また、今回のD・P(ドリーミング・パーソン)、村野理恵子も印象的な人物。
自分に自信が持てず、周りの目を気にしすぎ、友達もあまりいなくて、自分の空想の世界へこもってしまうタイプの女性です。
彼女の悪夢の中に逃げ込んだテーラという星の凶悪犯を捕獲するため、理恵子の夢の「場(フィールド)」へ彼女を救出に向かうのがシェンとマエストロ。
おどおどしてばかりの理恵子にシェンはイライラしてついついきつく当たってしまいますが、マエストロは年の功か、優しく彼女に接して彼女が抱える問題を解決してやろうとします。
理恵子の中に逃げ込んだ凶悪犯は一体何者なのか、シェンとマエストロは無事に凶悪犯を捕まえてドリームバスターとしての任務を成功させるのか、理恵子が抱える悩みは解消されるのか、といった読みどころが満載で読者をぐいぐい話に引き込んでいくのはさすが宮部さんの本領発揮といったところでしょうか。
SFファンタジーでありながら現代の日本に生きる一人のしがないOLの抱える問題を描いているところは、市井に生きる名もない人々を描くミステリや時代小説など、宮部さんの他の作品にも通じるところがあり、宮部ファンとしてはうれしい限りです。
ラストはすがすがしい印象がある一方で、マエストロとシェンの心情を思うと切なくもあり、ちょっと複雑な読後感でした。
あの終わり方だと、理恵子も再登場があるのでしょうか…。
続きが気になるところです。


まだまだ物語は始まったばかりという印象があり、今の段階でこの作品をどうこう評価するのには抵抗がありますが、先が気になるシリーズであることは確かです。
いろいろと伏線も張られ始めたことですし、次巻以降も楽しみです。
☆4つ。