tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ブレーメンII (1)』川原泉

ブレーメン2 第1巻 (白泉社文庫 か 1-14)

ブレーメン2 第1巻 (白泉社文庫 か 1-14)


時は未来、人類の出生率低下対策のために生まれた動物乗組員達。彼らを乗せて、宇宙狭しと飛び廻るブレーメンII号の艦長は、キラ・ナルセ。だが、その航路には様々なトラブルが待っている…!?

川原泉さんの既刊本の中では唯一未読だった『ブレーメンII』。
文庫化を機に買ってみました。
うん、やっぱり面白い!!


西暦2300年代の未来、出生率の低下により深刻な労働力不足に悩まされる人類によって生み出された、人間の知能を持つ動物たち。
彼らがクルーを務める宇宙船「ブレーメンII」の艦長を命ぜられたのは、「イレブン・ナイン」(99.999999999%という、9が11個並ぶほどの正確性を持った優秀な人物という意味)の異名を誇るキラ・ナルセという女性だった。
この作品は、そんな「ブレーメンII」の珍道中(?)を描いています。
優れたSF関連作品に贈られる星雲賞を受賞した作品だけに、なかなか本格的なSFマンガです。
川原作品はいつもアカデミックな薀蓄がいっぱい詰まっていて、マンガなのに絵より字の方が多いのではないかというくらいで私はそれが好きなのですが、この作品に登場する物理学系・天文学系の薀蓄の数々は正直よく分からない部分も多々ありました。
そんなバリバリ理系の、男性的なSFの世界に、若い女性と動物たちというイメージの異なる登場人物(?)を配してほのぼの川原ワールドを作り上げているのが面白いです。
そして、そんな一見ほのぼのしたマンガでありながら、差別問題やジェンダーフリーなどの重いテーマをギャグタッチの中にさらりと忍び込ませてあるところも大きな魅力。
ストーリーはまだまだ序盤ですが、単なるSFではなく、ファンタジーやミステリの要素もあって、この先の展開が楽しみです。


ちなみに主人公キラ・ナルセは、白泉社文庫から刊行されている『空の食欲魔人』に収録の短編「アンドロイドはミスティ・ブルーの夢を見るか?」の主人公でもあります。
ストーリー上の繋がりはあまりありませんが、先に「アンドロイド〜」を読んでおいた方がより楽しめることは間違いありません。
この短編集は他の収録作品も名作揃いなので、ぜひどうぞ。