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tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』大崎梢

配達あかずきん―成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)

配達あかずきん―成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)


「いいよんさんわん」―近所に住む老人から託されたという謎の探求書リスト。コミック『あさきゆめみし』を購入後失踪した母を捜しに来た女性。配達したばかりの雑誌に挟まれていた盗撮写真…。駅ビルの六階にある書店・成風堂を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘の鋭いアルバイト・多絵が、さまざまな謎に取り組んでいく。本邦初の本格書店ミステリ、シリーズ第一弾。

本屋さんが舞台の小説って意外とないなぁ…と思っていたら、この「成風堂書店」シリーズが登場しました。
駅ビルの中にある中規模の書店、成風堂書店を舞台に、そこで起こった事件やちょっとした謎を書店員が解いていくという内容。
本屋に日常の謎という、私にとっては大好物の取り合わせに、もうそれだけでお腹いっぱいという感じでした。


この作品は5つの短編から成る連作短編集ですが、その全てにバランスよく書店員の仕事内容が盛り込まれており、本屋好きにはとても興味深く楽しめます。
あやふやな記憶だけで本を探しに来たお客さんのお手伝い、納品された本の検品、棚の入れ替え、レジ業務、近所のお店への配達、版元の営業さんとの商談、出版社の販促活動の一環としてのディスプレイコンテスト…一口に「書店員」と言っても、幅広くいろいろな仕事があるものですね。
中には困ったお客さんもたくさん現れるでしょうし、重い本を扱うのですから体力も必要でしょうし、ディスプレイやポップの作成にはセンスも問われますし。
単純に「本が好き」という気持ちだけで勤まる仕事ではなさそうです。
この作品の舞台である成風堂書店にも、さまざまなタイプの店員さんが働いていますが、月に10冊以上も読むような読書家というのはあまりいないようです。
主人公である杏子にしても、読書量は月に4〜5冊ということでほぼ私と同じくらい。
読むジャンルも勝手気ままで、特別な読書家ではないという控えめな「そこそこ本好き」具合に親近感と好感が持てました。
それでもあいまいな記憶だけで、本のタイトルも作者も出版社もまともに覚えていないような客の探す本を、わずかなヒントから探し当ててしまうのですからさすがはプロ!ですね。


肝心のミステリ部分に関しても、本屋ならではの事件や出来事に絡んでいて、しっかり「本格書店ミステリ」として成功しています。
探偵役は主人公の杏子ではなく、店のバイトの女子大生・多恵。
手先は不器用だけれど頭脳明晰で切れ者の多恵と杏子が協力して謎を解いていきます。
5つの短編全てにおいて謎が残ることなくきれいに全て解けていき、読後感がとてもよいです。
それぞれの話の長さも長すぎず短すぎずでちょうどよく、さまざまな書店ネタ・本ネタもマニアックすぎないので、「そこそこ本好き」なら十分楽しめます。
ただ、個人的にはけっこう展開やネタが読めるものが多かったのが少し残念。
「パンダは囁く」に登場する謎の暗号「いいよんさんわん」も、たぶん「アレ」を指してるんじゃないかなぁってすぐに察しがついてしまったし(え?もしかして私ってマニアック??)、ラストのお話「ディスプレイ・リプレイ」もけっこう早い段階で展開が読めてしまいました。
もう少しあっと驚くような展開がある方が私としては好み。
でも全体を通して見れば、十分に面白かったです。
☆4つ。