tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『3月のライオン(2)』羽海野チカ

3月のライオン 2 (ジェッツコミックス)

3月のライオン 2 (ジェッツコミックス)


「勝つ理由が無い」といいながら、負けると苦しいのは何故だ。将棋に対して中途半端な自分に悩む零。そんな零の前に、義姉・香子が現れる…。少しずつ、零の過去が明かされる第2巻。

物語の鍵を握りそうな人物が新たに登場して、少しずつですが物語が加速し始めました。
少し重い雰囲気は1巻から引き続きですが、1巻では主人公・零の家族を失った悲しみに焦点が当てられていましたが、2巻で印象的だったのは零のプロ棋士としての苦悩です。
ハチミツとクローバー』でも描かれた、才能ある者が味わう苦しみ。
中学生にしてプロになり、厳しい将棋の世界で戦い、自分の才能が誰かを傷つけるのを目の前にし…。
棋士としての自分のあり方や将棋との向き合い方にも思い悩む零がとても不安定で、苦しそうに見えて、胸が痛みます。
私は将棋のことは基本的な駒の動き方くらいしか知らないのですが、とてもシビアなゲーム、いやスポーツなのだなぁと思いました。
対局は時に何時間にも及ぶ攻防となり、最後は自分の口から「負けました」と認めなければならない。
忍耐力と粘り強さと、潔さが必要なんですね。
プロともなると、相当な精神力がなければ生き残っていけない世界だと思います。


でも、そんな厳しい世界の中でもがき苦しみながらも、零の周りには彼を心配してくれる温かな心を持った人たちがたくさんいる。
おいしいご飯を食べさせてくれる川本家の三姉妹はもちろん、ライバルであり親友(?)の棋士・二海堂、高校の担任の先生…。
彼らの存在が、重い雰囲気を持ったこのマンガをずいぶんと読みやすく、心和むものにしてくれています。
この明と暗のバランスがよいのが羽海野チカさんのマンガの長所だと思います。
ずしりと心に重くのしかかってくるシーンがあったかと思うと、ギャグで明るく笑わせてくれる部分もあって。
この2巻では二海堂が手製の絵本(!)で川本家の次女・ひなたと三女・モモちゃんに将棋の基礎の基礎を教える場面がとてもよかったです。
羽海野さん自身もこの箇所は楽しんで描かれたのではないかなぁと思いました。


個人的には三姉妹の長女・あかりおねいちゃんが好きなので、出番が少なめだったのが残念でしたが、代わりに(?)ひなたがとても可愛らしく描かれていたのがうれしかったです。
「ラブストーリー」を銘打っているわりには今のところ零の恋愛絡みの話はちらりとにおわせる程度にとどまっていますが、実際のところひなちゃんがヒロインなんですよね?(口絵などで零とツーショットで描かれているのはひなちゃんだけですもんね)
今は幼なじみの野球部の男の子に恋をしているひなちゃんですが、今後零との関係がどう変わっていくのか楽しみです。
そして、2巻から本格的に登場した零の義姉・香子(きょうこ)と零の関係も気になるところです。
物語はまだ始まったばかり。
これからの展開を楽しみに見守って行きたいと思います。