tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

「クィーン」


1997年8月31日。チャールズ皇太子との離婚後、充実した人生の真っ只中にいたダイアナ元皇太子妃が、パパラッチとの激しいカーチェイスの末、自動車事故によって急逝した―。事故直後、英国国民の関心は一斉にエリザベス女王に向けられ、たびたび取り沙汰されていたエリザベス女王とダイアナの不仲説への好奇心の対象となった。民間人となった彼女の死に対して、エリザベス女王はコメントをする必要はないはずだったが、絶大な人気を誇るダイアナの死を無視することは、結果的に国民を無視することとなる。民衆の不信感は急激に増大し、エリザベス女王はたちまち窮地に追い込まれてしまう―。

レンタルDVDにて鑑賞。
なかなか面白い映画でした。
主演のヘレン・ミレンはこのエリザベス女王役でアカデミー主演女優賞を獲得しましたが、それも納得の素晴らしい女王ぶりが見られます。
ダイアナ元妃の死後、女王としての公式の声明を出さず、静養地からバッキンガム宮殿にも戻らなかったことでイギリス国民やマスコミから嵐のような批判を受け、君主制の危機を招いた女王の苦悩の姿が描かれます。
女王とは好対照に、ダイアナ元妃のことを"people's princess"(国民のプリンセス)と表現して国民から絶大な支持を受けたトニー・ブレア前首相との関係性も面白いです。
在りし日のダイアナ元妃の姿や事故当時の実際の報道映像も交えた映像は、フィクションでありながらドキュメンタリーであるかのようなリアリティも伴っています。
ちょっとチャールズ皇太子の影が薄いような気がするのが残念に感じましたが、イギリスを揺るがしたあの大事件を女王の視点から描いたというのが新鮮で、興味深く思いました。
基本的にはエリザベス女王に敬意を払って制作された映画だと思うのですが、女王や王室やダイアナ元妃に投げかけられたあからさまでえげつない批判の言葉もたくさん盛り込まれているあたりは、イギリスのお国柄も表れているのかなぁと思いました。
日本で天皇家を題材に映画を作ったとしても、こうしたえげつない表現は使えないでしょうからねぇ。


個人的にはダイアナ元妃の事故直後のイギリスの状況をあまり知らなかったので、そうかこんな感じだったんだと今さらながらに思いました。
当時私はオーストラリアにいて、一応テレビで葬儀の様子も少しだけ見ましたし、新聞は連日ダイアナ元妃写真集のような状態になっていたのもよく覚えていますが、正直そんなことよりも自分のホームステイ生活の方が大事といった状況だったんですよね。
もちろんオーストラリアは英連邦の一員ですし、街中で半旗が掲げられていたりするのも見ました。
通っていた語学学校でもダイアナ元妃の話題は当然出ましたし、日本ではどのような反応なのか調べてみてという先生の言葉を受けて実家に国際電話して話を聞いたりもしましたが、自分で実際に日本語の報道を見たわけではないので、どうもこの出来事は私の中で印象的でありながら空白部分も多いという微妙な位置づけになっていたのです。
その空白部分が、この映画を観ることによってようやく埋まったような気がしました。
実は2周忌の時にはロンドンとパリに旅行に行き、事故現場も見ましたし、あちこちで献花されているのも見たんですけど。
さらには、遡ってダイアナ元妃がチャールズ皇太子との新婚旅行で京都に来られた際には、私が当時通っていた小学校の前を2人が乗った車が通るということで見に行ったりもした(姿が見られたのは一瞬だけでしたが、ダイアナ元妃が赤いワンピースを着ておられたのだけはよく覚えています)んですよね。
なんだかダイアナ元妃とは妙な縁があるような、ないような…なのです(^_^;)


そんなこんなで個人的にも非常に興味深い映画でありました。