tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ある閉ざされた雪の山荘で』東野圭吾

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)


1度限りの大トリック!
たった1度の大トリック!劇中の殺人は真実か?
俳優志願の男女7人、殺人劇の恐怖の結末。


早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか?驚愕の終幕が読者を待っている!

東野圭吾さんのミステリは、本当にシンプルで巧いよね。
なんだか東野さんの作品の感想は毎回同じような感想になっちゃうなぁ…。


『ある閉ざされた雪の山荘で』なんていうタイトルですが、雪は降っていないし閉ざされてもいません。
ある舞台のオーディションに合格した役者たちが山荘に集まり、そこで「外は吹雪で外部との連絡も取れない孤立した山荘で殺人事件が起こる」という「設定」で芝居をするという話です。
途中で山荘を出たり電話などで外部と接触した場合はオーディションの合格を取り消すという条件が付けられたため、事実上「孤立した山荘」において芝居は続けられますが、やがて現実に殺人事件が起こったことをほのめかすものが見つかり、役者たちは疑心暗鬼に…。
さてこの山荘で起こっていることは、芝居なのか、それとも現実の殺人なのか?
――というのがあらすじですが、この本格ミステリの定番設定を逆手に取ったような設定が面白いです。
ストレートに雪の山荘ものを書くのではなく、ちょっとひねったメタミステリにしているあたり、東野さんも素直じゃないなぁなんて思ったりして(笑)
でもこの本格ミステリのパロディのような構成がうまく機能してこの作品に仕掛けられたトリックをきちんと成功させているのですから、多少ひねくれていてもミステリ作家としての東野さんの実力は疑いようのないところだと思います。
それにしても東野さんの作品には毎回ころっと騙されてしまうなぁ。
東野さんの傾向は分かっているのに。
この作品でも、かなり早い段階で違和感を感じていたのに。
東野さんの手玉に取られているようで悔しいけど、でもそれがなんだかうれしかったりもします。
☆4つ。


ところで法月綸太郎さん、解説で東野さんの他の作品のトリックをネタばれするのはやめてくださいよ…。
挙げられていた作品、私はほとんどが既読だったからよかったけど、みんながみんな東野さんの作品を刊行順に読んでるわけじゃないんですよ?
少なくとも解説の冒頭で「これこれの作品のトリックに言及しています」と具体的作品名をすべて挙げて警告しておくべきなんじゃないでしょうか。
それがミステリの解説者の良心だと思いますけど。
っていうか法月さん自身だってミステリ作家なのに、自分の作品の解説で他作品のネタばれをされても平気なんでしょうか?
なんだかちょっと白けちゃったなぁ…。