tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

「ブレイブストーリー」

ブレイブ ストーリー [DVD]

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11歳の平凡な少年ワタル(声・松たか子)は、ある日クールな転校生ミツル(声・ウエンツ瑛士)が不思議な扉を開けて中に入っていくのを目撃する。扉の向こう=幻界(ヴィジョン)へ行けば、一つだけ願いが叶うのだとミツルはいう。そんな折、ワタルの父が失踪し、母は心労で倒れてしまった。家族を再生させるべく、ワタルはその扉を開けるのだが…。

宮部みゆきさんのファンタジー小説ブレイブ・ストーリー』のアニメ映画化作品。
ゴールデンウィークにテレビ放映されていたものをビデオにとって、今ようやく見ました。


うむぅ。
なんとも微妙。
やっぱり映像化作品は原作を超えることは不可能なんですかねぇ。
いや、超えるまではいかなくても、せめて原作と同じレベルの魅力を伝えられなければ、映像化は成功とは言えないのではないでしょうか。
この映画の製作発表の時、「スタジオジブリと日本テレビに対抗したい」といった内容の発言がフジテレビ側からあったように記憶しています。
けれど、残念ながらこのクオリティではスタジオジブリの足元にも及ばないというのが正直な感想です。*1


スタジオジブリに対抗したいと思ったがゆえに、ジブリ作品を意識しすぎたものになってしまったのでしょうか、あるシーンが「天空の城ラピュタ」の某シーンと酷似していたのは非常に気になりました。
対抗するなら相手の真似をするのではなくそれを超えるオリジナルを作らなければ意味がないでしょうに。
作画は評判どおりきれいでしたが、これも私はジブリのレベルには及んでいないと感じました。
CGにちょっと頼りすぎではないかな、と。
ジブリもCGは使っていますが、それでもジブリの絵には絵画的な美しさがある。
この作品は立体感やアニメーションとしての動きは申し分なかったのですが、一枚絵として見たときにも美しいと感じられるシーンは非常に少ない気がしました。
そしてこれはジブリにとっても問題点ですが、やっぱりアニメの声優は話題先行でタレントや俳優にやらせるのではなく、本職のプロの声優さんに任せた方がいいと思います。
芸能人だとどうしてもその人のイメージで声を聞いてしまって、キャラクターと微妙なずれがあったりするから。


そして、一番の問題はシナリオ。
あれだけ素晴らしい原作があるのにそれを生かせていないのは本当に残念です。
クライマックスのワタルが自分自身と対峙するところから女神への願いを口にするところはよかったと思いますが、途中がねぇ。
仲間との友情とか、ヴィジョンが直面している危機とか、その辺りをほとんどすっ飛ばしてしまっているため、何がなんだか分からない。
その辺りをきちんと描いておかなければ、最後のワタルの「願い」にも説得力がなくなってしまう。
結末もなんだかご都合主義っぽくなってしまっていたけど…これは子ども向けなら仕方ないのかな。
原作は確かに子どもにはシビアな部分が多かったけれど…でも今時の子って、テレビゲームや漫画などでシビアなストーリー展開にも慣れてるんじゃないのかな。
大事なのはちゃんとフォローがあるかどうかだと思うんですよね。
どんなに辛くてもきつくても絶望的な状況でも、希望を見出す道はあるんだよ、みたいな。


フジテレビが本気でこれからスタジオジブリに対抗できるアニメ映画を作っていく気があるのならば、もっとお金をかけてでも、シナリオ・絵・声優すべてにおいて完璧を目指してとことんまで練りこんでいく必要があると思います。

*1:まあこの映画と同時期に公開されていたのがあの評判最悪の「ゲド戦記」だったのはある意味ラッキーでしたが…