tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『仮面山荘殺人事件』東野圭吾

仮面山荘殺人事件 (講談社文庫)

仮面山荘殺人事件 (講談社文庫)


8人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡を断たれた8人は脱出を試みるが、ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まる中、ついに1人が殺される。だが状況から考えて、犯人は強盗たちではありえなかった。7人の男女は互いに疑心暗鬼にかられ、パニックに陥っていった……。

やっぱり東野圭吾さんの本格ミステリは面白い。
そう再確認できた作品でした。


この作品では、3つの大きな謎が軸となっています。
まず一つ目の謎は、主人公である高之の婚約者・朋美の死の謎。
交通事故で亡くなったとされる朋美だが、状況には不自然な点がいくつかあり、殺されたという可能性もあった。
果たして彼女の死の真相は?
そして彼女の死から1年後、朋美の父・伸彦が所有する別荘に、伸彦の親族や高之を含む関係者たちが集まった。
そこになんと2人組の銀行強盗が侵入し、高之たちにライフルを突きつける。
彼らは一体何者なのか?
これが第二の謎。
そして最後の謎は、強盗たちが高之たちが逃げたりしないよう見張っている中で起きた、殺人事件。
犯人は誰で、いかなる動機を持って、どうやって殺したのか?


まず感心したのは、本格ミステリではお約束の「クローズド・サークル」(外部との接点を断たれた状況)の作り方が面白いなということ。
別荘に銀行強盗が侵入してきてそこにいた全員が監禁状態になることにより、警察への通報はもちろん、別荘から脱出したり外部へ連絡を取ったりすることも不可能になります。
嵐の孤島だの吹雪の山荘だの、そういった定番の設定よりも非現実的のように思えますが、その分緊迫感は増しているように思います。
何しろ「敵」は自分たちの中にいるらしい殺人犯に加え、銀行強盗までいるのですから。
この息が詰まるような緊迫感の中、物語はテンポよく進んでいき、そして…。
最後の「オチ」には、「はぁ〜、そうか〜、そう来たか〜…」と思わずため息。
最後の最後に一気に物語の様相をひっくり返す。
そういうのがうまいですね、東野さんは、本当に。
まぁこのオチには肩透かしを食らう面もあるので、人によっては怒り出すかもしれませんが、それは東野さんが仕掛けた罠にまんまとかかってしまったという証。
きっと東野さんは、多くの読者をだますことに成功しているはずです。
一体今までに何人だまくらかしてきたんでしょうね(笑)
読み終わった後、再び冒頭を少し読み返した時に、ある人物の発言の中にあった○○という言葉は比喩的表現ではなく、本当にそのまま言葉通りの意味だったんだな、ということに気付き、東野さんの伏線の張り方のうまさに改めて感心しました。
これからもますますだましのテクニックを磨いて欲しいな、と思います。
☆4つ。


ところで未読の方はAmazonのレビューは見ないようにお気をつけくださいね。
ネタばれがありますから。
明らかに読み間違いをしていて、しかもその読み間違いをしている箇所を批判している(つまりまったく的外れな批判をしている)人までいるし…。
なんというか、Amazonのレビューの質ってもうちょっと何とかならないものでしょうかね。
もちろんよいレビューもたくさんあるのですけど…。