tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『龍の館の秘密』谷原秋桜子

龍の館の秘密 (創元推理文庫)

龍の館の秘密 (創元推理文庫)


行方不明の父親を捜すため、倉西美波はアルバイトに励んでいる。今回は、「立っているだけで一日二万円」の仕事。でもバイト先での宴会の末、たどり着いた「龍の館」で、またもや殺人事件が勃発!被害者はなぜ溺死する寸前になるまで助けを求めなかったのか?『天使が開けた密室』で注目を浴びた著者が放つ、清新な本格ミステリ第二弾。未発表短編「善人だらけの街」を併録。

天使が開けた密室』の続編。
いや〜、やっぱこのシリーズ、面白いわ。


ライトノベルレーベルから誕生したこのシリーズですが、ミステリ的にはかなりの本格風味。
前回は「衆人環視の密室」というネタでしたが、今回は「館もの」!
なんともミステリ好きの心をくすぐってくれる題材じゃないですか。
謎解き部分には図解も使われていて(ぱらぱらページをめくっていてうっかり見てしまう、ということを避けるために上下反転して印刷されている気遣いもうれしい)、本格度は前作よりも上がっているように思います。
ですがやはり元はラノベですので、ミステリ部分以外でもなかなか楽しめます。
さまざまな謎やトリックが隠された京都の洋館「龍の館」で起こった殺人事件に巻き込まれてしまった美波。
親友の江戸っ子美少女・直海や公家の血を引くミステリマニア・かのこの2人をはじめ、本シリーズの探偵役で美波の隣人・修矢らおなじみの人物たちが「龍の館」に集合し、事件の謎を解いていきます。
美波は相変わらずのおっちょこちょいですが、直海とかのこは結果的には真相から外れていたものの、なかなか鋭い推理力を見せてくれます。
そしてなんと言っても今回は修矢の活躍ぶりが光っていますね。
美波のピンチには必ず颯爽と現れて救い出しています。
少女マンガなら花や星を背負って登場しそうな感じです(長身・美形だし)。
「性格は最悪」という美波ですが、幾度となく自分を助けてくれる修矢にまんざらでもない様子。
2人の関係がこれから進展していくのかどうかもこのシリーズを読む楽しみの一つになりそうです。
また、今回はかのこの幼なじみで「龍の館」に住む綾という少女が新たな人物として登場しますが、彼女もレギュラー陣に負けず劣らず個性的な人物で、なかなか魅力的で好感が持てます。
ラノベ作品にしてはオタク受けしそうなキャラクターは登場しませんが、少々ありがちな設定ながらも好感を持ちやすいキャラクターたちもこのシリーズの魅力の一つでしょう。


ということで今回もなかなか満足でした。
☆4つ。
☆の数は前作と同じですが、今回の方が若干満足度は上かな。
早く続編が読みたい!と思っていたら、2月発売予定だった新作『砂の城の殺人』はどうやら3月に延びてしまったようですね…。
楽しみに発刊を待っています。


ところで私、今年に入ってから創元推理文庫ばっかり読んでますね。
アヒルと鴨のコインロッカー』から始まって、なんと5冊連続…。
創元推理文庫ははずれが少ない気がします。