- 作者: 谷原秋桜子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/11/30
- メディア: 文庫
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行方不明の父親を捜すため、倉西美波はアルバイトに励んでいる。そのバイト先で高額の借金を負うハメになり困惑していたところ、「寝ているだけで一晩五千円」というバイトが舞い込んだ。喜び勇んで引き受けたら殺人事件に巻き込まれて…。怖がりだけど、一途で健気な美波が奮闘する、ライトな本格ミステリ。期待のシリーズ第一弾!短編「たった、二十九分の誘拐」も収録。
もともとは「富士見ミステリー文庫」というミステリ系ライトノベルのレーベルで刊行されていた<激アルバイター美波>シリーズ第1弾と第2弾が、このたび創元推理文庫で復刊。
それとともに作者も作家活動を再開し、2月にシリーズ第3弾にあたる新作『砂の城の殺人』を上梓予定。
―と、こういう流れのようです。
ライトノベルは嫌いではないけれど、読み応えという点ではどうなのかな〜と思いつつ、表紙イラストの可愛らしさに惹かれて買ってみました。
するとこれがなかなかの「当たり」でした。
ライトノベルだけにさくさく読めるのですが、ミステリとしては意外なほどに本格風味。
「衆人環視の密室における殺人」というネタはよく練られていて、犯人もけっこう意外な人物でした。
キャラクターもある意味ありがちな造形ではありますが、それぞれ個性が際立っていてなかなか面白かったです。
ちょっとドジだけど頑張り屋の主人公・美波をはじめ、特技が「泣き落とし」という美波の母、美少女なのにべらんめえ口調の親友・直海、公家の血を引くミステリマニアの親友・かのこ、美波の隣に住むひきこもり大学生・修矢ら人間のキャラクターに加え、美波のペットで黒のラブラドール犬のモネと修矢のペットでルシアンブルー(猫)のケンゾウの2匹も作品のよいアクセントになっています。
女子高生が主人公のラノベにしては、少々エグいシーンが出てきたのにはちょっとびっくりしましたが、これも本格志向の表れ…なのか??
事件が起こって話が盛り上がってくるまでが少々長いのが残念ではありますが。
とにかく、ラノベならではの軽快さと読みやすさもあり、本格ミステリとしての謎解きの面白さもあり、で非常に楽しめました。
『天使が開けた密室』というタイトルの付け方もうまいですね。
「行方不明の父親を探す」というシリーズ全体にわたる大きな伏線もあることだし、これは続きが楽しみです。
傑作とまではいきませんが、私はかなり気に入りました。
続きが楽しみな作品が増えるのは幸せなことです。
ミステリがお好きで、ラノベが大丈夫な方はぜひ。
☆4つ。