tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『しのぶセンセにサヨナラ 浪花少年探偵団・独立編』東野圭吾

しのぶセンセにサヨナラ (講談社文庫)

しのぶセンセにサヨナラ (講談社文庫)


竹内しのぶ、25歳、独身。大阪大路小学校の教諭だが兵庫の大学へ内地留学中。あれから三年、浪花のヘプバーンこと、しのぶセンセがさらにパワーアップして帰ってきた。もう誰にも止められない!?抱腹絶倒、でもチョッピリ切ない物語。いま人気急上昇中の俊英が贈る超人気連作ミステリー、待望の文庫化。

浪花少年探偵団』の続編です。
主人公のしのぶセンセは小学校の先生をお休みして内地留学で大学生としてお勉強中。
ですが、運転免許を取ろうとしても、東京へ行っても、盲腸で入院しても、学生生活を終えて学校に復帰しても、やっぱり事件に巻き込まれています。
ううむ、連作ものミステリの主人公が行く先々で事件に遭遇するのはお約束とは言っても、こうも巻き込まれてばかりで本業の教師としての勉強や仕事は大丈夫なの!?と心配になってしまいます。
でもまぁ、そこはバイタリティあふれるしのぶセンセのことですから、やることはきちんとやっているのでしょう。
今回は前作から少し時間が経過して、教え子の悪ガキたちも中学生になっています。
ちょっとは成長したのかと思いきや、悪知恵を働かせたり減らず口をたたいたりするところはちっとも変わっていません。
もちろんしのぶセンセとの結婚を目論む新藤刑事とそのライバル・本間の恋の鞘当ても継続中。
二人ともあまりしのぶセンセには本気の恋愛対象として見られていないのが哀れというかなんと言うか。
なんだかこの3人は永遠にこの関係のままなんじゃないかというような気さえしてきます。
そして、今回新しく登場した人物の中では、しのぶセンセの母・妙子が非常にいい味を出しています。
なるほど、しのぶセンセはお母さん似だったのね…と納得することしきり。
お父さんの影が薄いですが(笑)、妙子としのぶセンセがいればそれだけで明るい家族なんだろうなと想像できて楽しくなりました。
やっぱり東野さんが描く大阪人はとても生き生きとしていていいですね。


今回しのぶセンセは教師としての仕事をお休みしているので、子どもたちとの絡みが少なかったのがちょっと残念。
ですが、離れていてもかつての教え子たちのことを気にかけている姿は、やはりプロの先生なんだなと思いました。
最後の章で教職に復帰し、いろいろと悩み迷いながらも体当たりで子どもたちに接していくしのぶセンセは輝いていました。
きっとしのぶセンセにとって、教職は天職なのでしょうね。
このシリーズ、面白いのでぜひ続編を書いて欲しいのですが…、もはや東野さんに求められている作品はこういう軽いテイストのものではないんでしょうかねぇ。
☆4つ。