- 作者: 若竹七海
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1996/12
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (60件) を見る
月刊社内報の編集長に抜擢され、若竹七海の不完全燃焼ぎみなOL生活はどこへやら。慣れぬカメラ片手に創刊準備も怠りなく。そこへ「小説を載せろ」とのお達し。プロを頼む予算とてなく社内調達ままならず、大学時代の先輩に泣きついたところ、匿名作家を紹介される。かくして掲載された十二の物語が謎を呼ぶ、贅を凝らしたデビュー作。
いまさらこんな有名作品の読後感想を書いてるだなんて、ミステリ好きのお仲間さんたちには「まだ読んでなかったのかよ!」と怒られてしまいそうなんですが、すいません、未読だったんです(汗)
で、ようやく読んだこの作品、期待を裏切らず面白かったです!
なんと言っても構成が凝っていますね〜。
本の中に社内報が12か月分入ってる!!
…と言っても社内報の中でも、編集長の若竹七海(作者と同じ名前♪)が学生時代の先輩に紹介してもらって執筆依頼した匿名ミステリ作家の短編ミステリ部分しか読めないんですけどね。
でも、社内報の目次は見ることができます。
これが本当に「ありそうな」見出しが並んでいて面白いのです。
しかもこれがちゃんと謎解きにも絡んでくるんですから、本当によく考えられている。
この12か月分の短編ミステリも、正統派「日常の謎」あり、怪談めいたものあり、叙述トリックっぽいものありでとても楽しめるのですが、最後にこれら12の物語が結びついて、驚きの真相が姿を現します。
これが本当によくできてる。
私はこういう構成になっていることを知っていて読んだので、「あれ?これはもしかして…」と思ったところもあって、結果的には私の勘は当たっていたのですけれど、それでも最後に全ての謎が解けたときにはすっきり爽快感がありました。
ところどころにミステリファンだけが気付くことができるような小ネタも仕込んであって、読者を楽しませようというサービス精神いっぱいです。
ただ、作風は好き嫌いが分かれるところかもしれませんね。
女性らしい優しい雰囲気もあるのに、どこか背筋をぞくっとさせるようなところもあって、ほのぼの気分にはなれないですね。
見かけによらず意外と辛口なので、甘いのが苦手な人も楽しめると思います。
私は甘いのも大好きだけど…けっこうこういうのも好きです。
ラストもなんともいえない不安感に襲われます。
あの後、どうなったんでしょうね…。
☆4つ。