tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『4TEEN』石田衣良

4TEEN (新潮文庫)

4TEEN (新潮文庫)


銀座から地下鉄で10分、長屋ともんじゃ焼きと超高層マンションが調和して共存する町・月島。この町で僕たちは恋をし、傷つき、死と出会い、そして大人になっていく…。14歳の中学生4人組が出会った8つの瑞々しい物語。

やっぱり14歳というのは人生における一つのターニングポイント(?)なんでしょうかねぇ。
一つの心と身体の中に、大人の部分と子どもの部分が共存しているお年頃。
そういえば、私も14歳の頃が一番「大人社会」に反感を持っていて、毎日友達と交換し合っていた手紙の中で意見交換したりしていたっけ。
過去話題になった14歳たちを振り返ってみれば、残虐な殺人事件を起こした14歳もいれば、オリンピックで金メダルを獲った14歳もいた。
いろんな14歳がいるけれど、本当はそんなにめちゃくちゃ大きな違いはないのかもしれないですね。


そういうわけで、この作品は4人の14歳の少年を描いた青春小説です。
まぁ、「青春小説」という響きから大体想像できる内容通りの、オーソドックスな青春小説といってよいでしょう。
難病やら同性愛やらドメスティック・バイオレンスやら、社会的な問題と絡めて少年たちの心の動きを描く手法は、なんとなく「金八先生」っぽい。
金八から説教臭さを抜いた感じで、誰でも読みやすい万人向けの小説だと思います。
連作短編集という形をとっているのですが、最初の方は前述のようにどこにでもありふれているような、オーソドックスな青春小説としか感じられず、正直言ってあまりのめりこめませんでした。
けれでも、後半に進むにつれてどんどん話がよくなっていく。
ラストのほうの、「大華火の夜に」「ぼくたちがセックスについて話すこと」「空色の自転車」は本当によかったです。
14歳の男の子って、同年代の女子や大人から見ると、ホントにバカばっかりやってて子どもっぽく見えるんですが、本当はそんなことないよね。
ちゃんと他人への思いやりを持っていて、正しいことと間違ったことを見分ける力も持っている。
特に「大華火の夜に」はちょっと涙腺を刺激される結末でした。
しかし…もったいないなぁ。
全部の話がこのレベルで書かれていたらなぁ。
それは著者のあとがきを読んで納得、この連作短編集は、足掛け5年の歳月をかけて書かれたものだったのですね。
最初と最後とでは、石田衣良さんの作家としての実力が違っているわけです。
作者の成長ぶりが見られるのもうれしいけれど、やっぱり1冊の本として読むと、作品ごとの水準の違いがちょっと目立ってしまうかな。
採点としては☆4つ。
最初から最後まで同じ高水準を保っていれば5つ星つけたのですが…。


ところでストーリーとは関係ないですが、文章内の漢字の使い方がちょっと気になりました。
なんで「下」とか「前」とか「行く」とかのとても簡単な漢字をひらがなで書いているのかなぁ。
石田さんの作品ではどれでも同じなのでしょうか。
それともこの作品がヤングアダルト向けというのを意識して、わざと使用する漢字を減らしたのでしょうか。
後者だったらちょっと納得いかないなぁ。
小学校で習うような簡単な漢字を使わず、「轟音」のような難しい漢字を使うって…どういう意図なのかよく分かりません。
とても細かいことだけど、気になって仕方ありませんでした(気にするな、って言われそう・汗)