tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『MOMENT』本多孝好

MOMENT (集英社文庫)

MOMENT (集英社文庫)


死にゆくあなたのために、僕ができること。
病院でバイトをする「僕」は末期患者の願いを叶えることを始める。
「初恋の人に会いたい」「いっそ殺してくれ」――そこに込められた深い悲しみに、心は揺さぶられていく。
深くて切ない青春小説。

『ALONE TOGETHER』を読んだ時に、「この作家さんとはどうも相性が悪い」と思ったくせに、装丁とあらすじに惹かれて本作を買ってしまいました(^_^;)
でも、この作品はなかなか読みやすく、ストーリーもよかったです。
結果オーライってことで。


「人は死ぬまさにその瞬間にどんなことを考えるのだろう?」「死ぬ前に一つだけ願い事がかなうとしたら、何を願う?」――そんな重い問いを提示してくるこの作品ですが、読み心地はそれほど重くありません。
感情を抑えた、淡々とした語り口が、この作品が必要以上に重い作品になってしまうことを防いでいるようです。
これは本多さんの持ち味でしょうね。
淡々としていると言っても冷たく突き放したような感じもなく、主人公の大学生とその幼なじみとの会話の小気味よさや、各エピソードの結末の切なさが、いい具合に絡み合って、さわやかな青春小説としても読めるようになっています。
連作短編集のような形態を取っているこの作品、4つのエピソードのどれもがそれぞれに意外な結末を迎えるので、ミステリ好きにも楽しめるかもしれません。
私は個人的に3話目の「FIREFLY」が好きです。
美人で、華やかな印象の元・水商売の女性。
乳がんが再発し、死を意識した彼女の最後の願いが切なくて泣かせます。
また、全編を通しての主人公と幼なじみの微妙な関係もいいですね。
何かが始まる予感を感じさせるラストもさわやかでいい感じです。
「生と死」を扱いながらもこの読後感のよさはポイント高し。
☆4つ。


ところで、この本についていた帯によると、読者の「最後の願い」を本多孝好さんが小説化するという企画をやっているようですが、ということは本作品の続編を書くということなんでしょうかね?
なかなか面白そうな企画なので、興味のある方は応募してみるとよいかも…。
私の「最後の願い」?
う〜ん、何かな…パッとは思いつかない(^_^;)