tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『ダーリンの頭ン中』小栗左多里&トニー・ラズロ

ダーリンの頭ン中 英語と語学

ダーリンの頭ン中 英語と語学



ダーリンは外国人」コンビのトニー&さおりコンビが送る、英語と日本語の不思議や違いをわかりやすく面白く描いた、「言葉」エンタテインメント!
あいかわらずの「THE」論争や「V」の発音についてのすったもんだなど、笑いながらしっかり学べる珠玉の一冊!
トニーにまけない語学おたくの人も、是非ご一読を。

ベストセラー『ダーリンは外国人』シリーズですっかり有名人になったさおり&トニーコンビの日常から湧き出た英語と日本語の不思議の数々を分かりやすく漫画で解説してくれる、学問としての語学への入門書とでも言うべき本です。
サブタイトルに「英語と語学」とありますが、この本は決して英語学習法のハウツー本ではありません。
英語力をつけるための語学解説書でもありません。
この本が伝えようとしているのはただ一つ、「語学を学ぶ楽しさ」でしょう。
「語学オタク」のトニーによる「語学オタクのススメ」と言ってもいいかもしれません。
ダーリンは外国人』シリーズとはちょっと違い、やや小難しい話も出てきますが、可愛らしい絵柄でさらっと読めてしまい、知らないうちに読者を言語学の入り口に立たせてしまうのが本書のよいところだと思います。
一番興味深かったのは、日本人が英語は日本語よりも発音が複雑で難しいと考えていることに対するトニーからの反論でした。
実は日本語の発音も非常に難しいものなのですね。
日本人の私たちにとって、日本語の発音について普段意識することはあまりないからその複雑さに気付いていないだけなんですね。
どの言語が簡単でどの言語が難しいとは一概には言えないわけです。
英語は難しいとしり込みしている人も、本書を読めば「難しい」日本語をしゃべっている自分に自信がついて、英語に対するアレルギーも少しは解消するかもしれません。


それにしてもトニーの語学オタクっぷりはすごいですね〜。
何ヶ国語もマスターしているトニーですが、こういう人って外国語が好きなように見えて実はそれ以上に自分の母語を愛していたりするんですよね。
出典はちょっと忘れてしまったのですが、「外国語を知らなければ自分の国の言葉のよさは分からない」という言葉があります。
これは全くその通りで、私にしても英語を学ぶ中で日本語を改めて見直すという機会が非常に多いのです。
例えば、最近アメリカ人に「日本人は『7』を『なな』と言ったり『しち』と言ったりするけどどう違うの?」と訊かれました。
…どう違うんでしょう??
そんなこといきなり訊かれても分かりませんよね。
で、あわてて辞書をいろいろ引いてみたりして。
考えてみたら日本語には数字の数え方がいっぱいあるんですよね。
「いち、に、さん」と数える人もいれば、「ひい、ふう、みい」と数える人もいる。
小さい子どもなんかは「ひとつ、ふたつ、みっつ」と数えるだろうし、「いち、にい、さんまのしっぽ…」(地域によって違うようですが)なんていう数え歌もありますね。
ところが英語だとやっぱり全部"one, two, three"になってしまいます。
一人称を指す言葉も英語だと"I"しかありませんが、日本語には一体何種類あるのでしょうか。
「わたし」「僕」「おれ」「わたくし」「あたし」「あっし」「おいら」「小生」「余」「俺様」「我輩」「わし」「ミー」…日本語ってなんて表現の幅が広いのだろうと思ってしまいますね。
外国語を知るということは母語を知ることとほぼイコールだと思うのです。
まさに今さおりさんがトニーとの生活の中で身を持って体感しているのがこれではないでしょうか。
「英語も日本語も、もちろんほかの言語も、知れば知るほど面白い」。
外国語を勉強している人はもちろんのこと、「日本語」を商売道具にしている人(日本語教師とか、文筆業とか)や『ダーリンは外国人』ファンの人にもオススメの1冊です。