tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『H2 15巻 サンデーコミックスワイド版』あだち充

ドラマの最終回前にコミックスの刊行を終わらせてしまおうという魂胆なのか、すでに昨日完結巻の17巻まで発売されました。
またドラマのために予定より早めたんだろうなぁ。
そのせいかAmazonにまだ登録がないようです。*1
ドラマって異様に展開が速いみたいですね。
今日の予告編をたまたま見たら、すでにひかりのお母さんが入院してた…。
てことは何?
比呂の春華への"I love you."は飛ばしたの??
あ、これを最終回に持ってくるのかな。
考えてみれば原作で比呂がはっきりと春華への気持ちを表す場面って、ここしかないですもんね…。


選抜大会が終わって、比呂たちの高校生活最後の1年が始まった。
そんなある日、比呂の母とひかりの母が相次いで入院する。
盲腸だった比呂の母はまもなく退院したが、ひかりの母は亡くなった…。
母を失っても誰にも涙を見せず、気丈に振舞うひかり。
そんな中、幼い頃に比呂と一緒に遊んだ思い出の空き地にビルが建つと知ったひかりは、いても立ってもいられずにその空き地へ向かう。
そこに現れ、黙ってひかりにグローブとボールを渡す比呂。
一言もしゃべらず、ただただ日が暮れるまでキャッチボールを続ける二人…そして、やがてひかりは比呂の前で初めての涙を流すのだった。
―さて、短い春が終わって夏。
完全試合も達成し、絶好調で2回目の夏の甲子園への切符を手に入れた比呂。
名門明和一史上最強チームと共に英雄も甲子園出場を決めた。
最後の夏、高校野球史上に残る2人の怪物の対決の瞬間が近付いていた…。


このあたりが『H2』のストーリーの最高の盛り上がりでしょう。
ひかりのお母さんが亡くなる前後は何回読んでも泣いてしまいます。
『タッチ』でもそうでしたが、登場人物が大切な人の死で泣いているシーンというのはほとんどないんですね。
1コマ〜2コマくらいしかない。
それでもキャラクターたちの悲しみがすごくよく伝わってくるのです。
さりげない表情やセリフが切なくて切なくて…この切なさがあだち漫画の真髄ですね。
このひかりの母の死というのは物語のターニングポイントでもあり、ひかりと比呂の関係が一気に変わってしまうできごとです。
恋人の英雄にすら見せなかった涙を比呂の前で流したひかり。
周りに心配をかけまいとして強がってしまうひかりの気持ちを誰よりも理解していて、泣かせてあげられるのは比呂だけなんですよね。
このことをきっかけにひかりはやはり自分には比呂が必要だと感じたでしょう。
それでも英雄を恋人として大切に思う気持ちも嘘ではなくて…2つの想いの間で揺れるひかりの切ない表情が涙を誘います。


この巻の名台詞は多すぎて選べなかったので(笑)、とにかく全部並べてみます。
私の下手なコメントもなしで。

ひかりの母
「本当に勝ちたいと思ってる?ヒデちゃんに。
 負けを認めることでスッキリしようとしてない?」

比呂
「本当にいないの?……おばさん。
 この家のどこにも……」

ひかりの父
「比呂ちゃんは必ずプロ野球の大スターになるからって。
 この落書きは日本一有名なピッチャーのものとしてものすごい価値がでるんだって。」
比呂
「おじさん……
 有名になるよ、……おれ。」
ひかりの父
「―もうすでに値打ちモンだよ。」

春華
「泣いてあげなよ、ひかりさんの前で―
 橘くんにはできないことだもん。」

小山内美歩(明和一のマネージャー)
「わたしは人前でしか泣いたことないけどな。
 涙は女の武器―相手がいなけりゃ意味ないじゃん。」

ひかり
「比呂と幼なじみでよかった。
 さよなら。」

春華
「わたしの夢教えてあげよっか。」
比呂
「知ってるよ。
 スチュワーデスになるんだろ。」
春華
「国際線のね。
 そしてその飛行機に国見くんが乗るの。
 大リーグにいくために―」

英雄
「この先どんなに長い野球人生が続いたとしても、二度と来ませんよ。
 この夏を越える夏は―」

広田勝利(栄京の元エース)
「趣味の草野球…だと?
 てめえらにゃ一生ムリだ。
 化け物め……」

英雄
「ひかり。
 比呂のこと好きか?」
ひかり
「大好きよ。
 ……バカ。」

比呂
「ひかりはお前とは別れねえよ。
 ―それに、もし別れたとして、ひかりがほかの男とつきあうことになったとしても……
 ―それは、絶対におれじゃねえから。」
英雄
「なんでだよ。」
比呂
「おれのことが大好きだからさ。」

比呂
「感謝してるから。
 おまえがいてくれたおかげで千川に入学したことを後悔しなくてすんだんだから。
 古賀春華がいてくれたから―
 がんばれるんだよ。」

*1:ISBN:4091277950