tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『電車男』中野独人

電車男

電車男


電車内で絡む酔っ払い爺から女性を助けた、ひとりのアキバ系ヲタ青年。
彼女いない歴=年齢(22)の彼は、助けたお礼を送ってくれた彼女をデートに誘うべく、モテない独身男達が集うネットの掲示板に助けを求める。
「めし どこか たのむ」
電車男」と呼ばれるようになった彼は、掲示板の住人たちの励ましや助言に後押しされて、ようやく彼女をデートに誘う。
悩み、戸惑う電車男のピュアな気持ちは、仲間達を熱い共感と興奮の渦に巻きこんでいく……。
電車男」は果たして彼女に告白できるのか? 
ネット上で話題騒然、各紙誌絶賛。百万人を感動させた今世紀最強のラブストーリー、遂に刊行!!

ええと、最初に断っておきます。
今回はかなり辛口(貶してはいないつもりだけど)。
しかもBOOK REVIEW番外編?
というのも実は本を読んだわけではなく、ネット上のまとめサイトを読んだだけだから(^_^;)
内容は一緒だって聞いたし…。
なぜか突然読みたいと思ったので今さらながらまとめサイトを覗いてみたのです。


Amazonのカスタマーレビューを見ても、なんだか「感動した」という意見が非常に多いのですが、私にはこれが理解できませんでした。
この話のどこがそんなに感動できるのですか??
確かに掲示板の住人たちがだんだん一致団結して電車男を応援し始めるあたりは面白い。
たぶん、ギャラリーの応援の書き込みはみんな「本物」なんだろうしね。
でも電車男の書き込みが「本物」であるかどうかは分かりませんよね。
どうも話ができすぎで本当の話とは思いにくい(いくら仕事の関係で手に入るからって、電車内でたまたまちょっとお世話になった、イケてない風貌の見知らぬ男性にブランド物の食器なんか贈るかな〜。そもそも自分の住所や電話番号を知らせるようなマネ、私だったら絶対やらない。いつどんなことから犯罪に巻き込まれるか分からない世の中だし、助けてくれた人=いい人とは限らない)し、でもだからと言ってフィクションとしては陳腐なんですよね。
多分に男性の妄想というか、願望から成り立っている物語という印象を受けました。
あ、もしかしたらどうってことのない事実を妄想と願望で膨らまして大げさに書いただけなのかも知れませんね。
あとやっぱり2ちゃんねる用語では感動はできないな…。
意味は分かるんですけど、やっぱり読みにくいんですよね。
ギャル語なんかも「仲間内でのみ通じるということを楽しむ言葉」という点においては2ちゃんねる語と同じだと思うのですが、世間の多くの人に何か伝えたいことがあるなら、誰にでも伝わる言葉を用いるべきだと思うんですよね。
ネット上で、2ちゃんねるという限られた場所で見る分にはいいのですが、一般書籍という形で発表するのにはやっぱり一部の人にしかわからない2ちゃんねる語はふさわしくないと思うんです。
本のほうを読んだわけではないので偉そうなことは言えませんが、ネットの世界の住人たちが作り上げた物語をほんのちょっと編集しただけで書籍にして売っているのだとしたら、新潮社もずいぶんあくどい商売やってるなぁという感じです。
まぁ昨今ネットから生まれた書籍というのが増えてきていますから、新潮社さんばかり責めるのはフェアじゃないのでしょうけど。


でも、こうして2ちゃんねる内の出来事が本になってしかもそれがベストセラーになったら、マスコミ批判が多い2ちゃんねるも結局はメディアの一つになってしまう。
この『電車男』はコミックや映画にもなるそうですが、あまりメディアとの結びつきが強くなってしまうと、果たしてそれが2ちゃんねるにとっていいことなのかどうか…。
良くも悪くも2ちゃんねるって、さまざまな規制に縛られたマスコミには発信することのできない情報を発信し、共有できる場所だと思うから。
それができなくなったら2ちゃんねるはもはや存在意義を失ってしまうのではないでしょうか。