tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『H2 12巻 サンデーコミックスワイド版』あだち充

H2 (12) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)

H2 (12) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)

甲子園の夏が終わった。
3年生は引退し、新チームで選抜出場を目指す秋季大会が開幕。
しかし夏の王者・明和一高はブロック予選で姿を消してしまう。
一方千川高校は順調に勝ち進み、準決勝であの広田のいる栄京学園と再び対戦することになる。
勝つためには手段を選ばなかった栄京の監督は不在、エース広田は、ひじを壊して投げられなくなっていた…。


前の巻が劇的な展開だったのでこの巻はちょっと落ち着くのかと思いきや、なんだかまだまだごたごたしてます。
英雄が日本代表として親善試合でアメリカへ行っている間に比呂を海に誘ったひかり。
偶然にもその日の二人の2ショット写真が、英雄とひかりの仲を引き裂こうと企む明和一野球部のマネージャー・小山内美歩の手に渡り、美歩と木根の陰謀により写真がばらまかれてしまうことに。
それがきっかけでギクシャクし始めた比呂と春華はついにけんかをしてしまいます。
比呂が悪いとは言わないけど、でもこれはさすがにちょっと春華がかわいそう…。
「国見君の口から聞きたい」という春華の言葉はもっともですよねぇ。
デートをして、手をつないで、キス(比呂曰く「事故」だったのですが)をして…と順調に恋人らしく(?)なってきたのに、比呂は一度もはっきりと自分の気持ちを春華に言ったことはありませんからね。
春華の気持ちに応える気があるのか、それともやっぱりひかりのことが好きなのか、はっきりしてくれ!って感じですが、不安を抱えつつも文句も言わずずっと比呂を一途に想い続けてきた春華ちゃんはエライ!!
比呂もそろそろ男らしいところ見せなきゃね。
それにしても英雄の包容力というかなんというか、恋愛に対する大人な態度はすごすぎ。
本当に高校生なの??
20代でもここまで出来た男はめったにいないでしょ。
あまりにいい男すぎて逆に怖いぞ(笑)
そして、なんだかちょっと株が上がってきた(?)のがお調子者男・木根。
彼は秋季大会中に事故に遭って入院し、試合に出られなくなってしまいます。
口ではいつものお調子者を演じながら、実はこっそりトレーニング用具を病室に持ち込んでいて、結局その無理なトレーニングが原因で退院が延びて決勝戦までに間に合わなくなってしまった木根が病院の屋上で泣くシーンが最高です。
なんだかんだ言って野球が好きなんだというのが伝わってきました。
比呂、英雄、野田をはじめとして、本当にこの漫画は見渡す限り野球好きばっかりですね。


さてこの12巻の名台詞は比呂とひかりが雨の海でデートするシーンから。

わたし、周りが思ってるほど、しっかり者じゃないからね。
迷ったり弱気になったり、ウジウジ一人で悩んだり。
(中略)
―時々、突然急に比呂の顔が、見たくなることがあるの。
元気になれるんだ、比呂の前だと。
しっかりしなきゃってがんばれるんだ、昔から―
海と同じなんだよ、比呂は。
新学期が始まる前に、会っておきたかったの。
海と、比呂に―

このひかりの気持ちが恋愛感情かどうかは、ひとまず置いておいて。
ひかりにとって比呂がかけがえのない大切な人、というのは事実ですね。
英雄とはまた別の意味での大切な人。
スポーツ記者になりたいという明確な目標を持ってまずは大学進学を目指しているひかり。
今時こんな高校生めったにいない!?ってくらいのしっかり者ですが、ひかりがしっかり者という評価をもらえるのは、やっぱり大切な人が近くにいてくれるからこそですよね。
…うらやましすぎるぞ(笑)