tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『覆面作家の夢の家』

覆面作家の夢の家 (角川文庫)

覆面作家の夢の家 (角川文庫)


12分の1のドールハウスで行われた小さな殺人。
そこに秘められたメッセージの意味とは!?
天国的美貌を持つミステリー界の人気作家「覆面作家」こと新妻千秋さんが、若手編集者、岡部良介とともに、残された言葉の謎に挑む表題作をはじめ、名コンビが難事件を解き明かす全3篇を収録。
作家に探偵、おまけに大富豪のご令嬢と、様々な魅力を持つお嬢様探偵、千秋さんの名推理が冴えわたる"覆面作家"シリーズ第3弾。

昨日の『覆面作家の愛の歌』に続いて一気読み。
読めば読むほど面白くなってくるこのシリーズ、この3作目で完結なんて淋しすぎる。
もっと続きを読みたい気分です。


この三作目にも三つの短編が収録されていますが、ダントツでお薦めは表題作「覆面作家の夢の家」。
本格ミステリをこよなく愛し、日本の古典文学にも造詣の深い北村さんらしい謎解きが存分に楽しめます。
前代未聞の「人が死なないダイイングメッセージ」なんてよく考えましたね。
普通の殺人事件なら複雑すぎるダイイングメッセージですが、この作品の設定の中では非常によく活きている。
謎解きの過程も、綺麗に解けていく謎も面白い。
さらにラストは思わず笑みがこぼれてしまう、くすぐったいようなハッピーエンド。
リョースケと千秋さんに「おめでとう」と声をかけたくなってしまいます。
これぞ北村薫ワールドの真骨頂!
すらすらと2時間程度で読めるので、ちょっと時間が空いてしまったときに読めば、ちょっといい気分になれること間違いなしの一冊です。