tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

「模倣犯」

模倣犯 [DVD]

模倣犯 [DVD]


ひとりの女性が失踪し、切断された右腕が発見された。
やがて犯人はTVに電話出演し、殺人ライヴを予告する…。
宮部みゆきの長編ベストセラー小説を、日本映画界の鬼才・森田芳光監督のメガホンで映画化したミステリー大作。
犯罪における加害者の立場と被害者周辺の双方を両立して描いていく。
理由なき犯行の恐怖性や、TVやインターネットなどのメディア批判、そして原作とは異なるラストの展開に賛否が飛び交い、結果として大ヒットを記録した。
徹頭徹尾森田マジックともいうべき、彼の演出技術の集大成的作品に仕上がっており、また主演・中居正広の、これまで見せたことのないクールな一面も大いに作品のプラスとなっている。
その他、木村佳乃藤井隆津田寛治など総じてキャスト好演。
なかでも山崎努は名作『天国と地獄』をも彷彿させる貫禄の名演だ。

※はじめに…ネタばれしてます!原作も映画も両方観ていない方はご注意ください。


あまりに悪い評判ばかりなので、見ようか見るまいかずっと迷っていた映画「模倣犯」。
結局ビデオに撮って見てみることに。
結論。
見なけりゃよかった…(-_-メ)


キャスティングは危惧していたほどは悪くなかったと思います。
塚田真一役以外は。
とにかく脚本が破綻しているとしか思えません。
原作の見どころはことごとくカットされています。
人物描写の細かさが売りの作品なのに、映画ではどの登場人物も描き方が甘くて深みが全くありません。
有馬義男役の山崎努だけはその演技力ゆえに存在感はありました。
それでもあの脚本ではねぇ…。
原作通り、孫を奪われて嘆き悲しむシーンとか、塚田真一や前畑滋子に対して説教(?)するシーンとかがもっとあれば、山崎努の演技力ならきちんと演じられたでしょうし、もっと深みのある人物になっていたと思われるだけにもったいない。


ピースはかっこよすぎでした。
原作を読んだときに感じた嫌悪感が、映画のピースにはほとんど感じられませんでした。
最後は結局勝ち逃げしたって感じで、すごく後味が悪くて、納得いきませんでした。
大体赤ん坊って…なんでそんなのがいきなり出てくるのでしょうか?
「血ではなく、環境」って、ピースの性格でそんなこと言うのは絶対おかしいです。


前畑滋子役が木村佳乃と聞いた時には、原作の滋子のイメージにあまりに合っていないので腹が立ったのですが、あの脚本なら木村佳乃でも許せます(笑)
原作の滋子はジャーナリストとして悩んだり苦しんだり、夫や義父母とももめたりして、なかなか人間味豊かな人物だったので、映画の脚本もそうなっていたら到底木村佳乃には演じ切れなかったと思います(木村佳乃ファンの方ゴメンナサイ)。


滋子以外にもきちんと描かれていない人物が多かったのは本当に残念です。
特に塚田真一の「遺族の苦しみ」をちゃんと描かなかったのはこの映画の最大の失敗点だと思います。
そもそも『模倣犯』で宮部さんが書きたかったのは「犯罪の残酷さ=被害者とその遺族の癒えることのない傷」だったはず。
それが映画からはほとんど伝わってきませんでした。
塚田真一はキャスティング自体失敗でした。
もっと演技力のある俳優をキャスティングして、きっちり描いて欲しかったです。
そのためには映画では出て来なかった(よね?)水野久美も必要だし、樋口めぐみも外せません。
あと高井由美子が…(T_T)
あんな中途半端な登場の仕方なら、まだ出さない方がましだったかも。
彼女は物語後半の鍵となる重要人物だと思うのですが??
映画じゃ最後ピースに頼っていた彼女がそのピースを失ってどうなったかもフォローされてなくて、何のために由美子がでてくる必要があったのか、全く理解不能でした。
栗橋浩美と高井和明のつながりもきちんと描いてほしかったなぁ。
ヒロミのサイコキラーぶりは怖かったです。
ってかあれではヒロミもピースの描く犯罪劇の登場人物の一人にすぎなかったということが分からないと思うのですが?
単なる異常な犯罪者だよあれじゃあ…。
刑事たちも全然存在感なかったですし。
原作の存在は無視してるのでしょうか?
「原作・宮部みゆき」じゃなくて「原案・宮部みゆき」と表記してほしかったです…(泣)。


とにかく脚本最悪。
それと演出過剰って感じ。
ヘンにCGとか使わずに、演技力のある俳優をキャスティングして、人間ドラマとして勝負してほしかったです。
人気とかよりも、とにかく演技力重視で役者を厳選して、2クールぐらいかけて連続ドラマとしてやってくれないかな。
もちろん原作に忠実な脚本で。
まぁそもそもあの超大作を2時間やそこらの映画にするというのがどだい無理な話だったのかも…そう思っておくことにしよう(T_T)