tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『長い長い殺人』宮部みゆき

長い長い殺人 (光文社文庫)

長い長い殺人 (光文社文庫)


金は天下のまわりもの。
財布の中で現金は、きれいな金も汚ない金も、みな同じ顔をして収まっている。
しかし、財布の気持ちになれば、話は別だ。
刑事の財布、強請屋の財布、死者の財布から犯人の財布まで、10個の財布が物語る持ち主の行動、現金の動きが、意表をついた重大事件をあぶりだす!
読者を驚嘆させずにはおかない、前代未聞、驚天動地の話題作。

宮部みゆきさんの『長い長い殺人』を再読しました。
かなり前に図書館でハードカバーを借りて読んだのですが、ブックオフで文庫版が100円になっていたので買ってみました。


この作品は『模倣犯』の原点と言われているのですが、再読してみて納得しました。
犯人の感じが似てるんですね。
大きな事件を起こして、世間を騒がせているということに対して快感を覚えるという犯人像。
長い長い殺人』の犯人をさらに狡猾に、自己顕示欲を強くしたのが『模倣犯』の犯人といったところでしょうか。
長い長い殺人』は宮部さんのデビュー2年目の作品です。
彼女が長い時間をかけて『模倣犯』のストーリーを温めていたということが分かります。


また、この作品の面白いところは、何と言っても語り手が「財布」であるというところです。
パーフェクト・ブルー』や『心とろかすような』では元警察犬を語り手とした宮部さんですが、まさか無機物に語らせるとは…。
しかしこの試みは大成功しています。
確かに財布というのはけっこう長い時間を持ち主とともに過ごすものであり、財布の中にはお金以外のいろいろなものが入っていて、持ち主の生活や性格なども表れるものです。
女性は財布はバッグの中ですが、男性は常に衣服のポケットに入れていることが多く、まさに持ち主の人間の生活の全てを知っていると言ってもいいでしょう。


う〜ん、今だったら携帯が語り手だったりしたら面白いかな。
メモリやらメールやらいろんな情報を持ってますし。
十分ミステリ書けそうですけど。