tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『リセット』北村薫

リセット (新潮文庫)

リセット (新潮文庫)


遠く、近く、求めあう二つの魂。
想いはきっと、時を超える。
『スキップ』『ターン』に続く《時と人》シリーズ第三弾。


「―また、会えたね」。
昭和二十年五月、神戸。疎開を前に夢中で訪ねたわたしを、あの人は黄金色の入り日のなかで、穏やかに見つめてこういいました。
六年半前、あの人が選んだ言葉で通った心。
以来、遠く近く求めあってきた魂。
だけど、その翌日こそ二人の苛酷な運命の始まりの日だった→←流れる二つの《時》は巡り合い、もつれ合って、個の哀しみを超え、生命と生命を繋ぎ、奇跡を、呼ぶ。

ずっと文庫化を心待ちにしていた北村薫さんの『リセット』。
ついに文庫化!!
うれしくて、発売されてすぐ買っちゃいました。
しかも、巻末に宮部みゆきさんとの対談まで収録されてるじゃないですかv
なんてオイシイ本なんでしょう…(笑)
北村ファンじゃなくても買い!です。


もちろん物語のほうも存分に楽しみました。
『リセット』は、『スキップ』『ターン』に続く、北村さんの代表作「時と人」三部作の最後の作品。
とにかくこの三部作は文句なしにオススメ。
どれもラストシーンで確実に感動させてくれ、読んでよかったと思わせてくれる作品なのです。
『スキップ』では意識は女子高生のまま、いきなり42歳の高校教師の自分に飛んでしまった主人公の、前向きな強さに感動。
『ターン』では、何度も同じ時間を繰り返してしまうという時の「くるりん」に迷い込んでしまった女性の、過酷な状況を乗り越えてのラストシーンの奇跡に感動。
そしてこの『リセット』では、戦争という過酷な時代をも乗り越えて、貫き通されるひたむきな愛に感動しました。


正直、最初は前の2作とは異なる展開に少し戸惑いを覚えました。
しかし、戦前から戦中にかけての少女たちの生活の描写は、厳しい時代でありながら生き生きと輝いていて、読んでいてとても楽しかったです。
そして、時を越えて、生命さえも越えて、ただひとりの相手を求めて引き継がれていく想い。
題材としてはありがちな印象は否めません。
しかしそれでも、少しずつ淡々と語られてきた物語は、最後に暖かみの感じられるハッピーエンドに収束します。
巻末の対談で宮部さんが「『リセット』では時が優しい」と表現していますが、まさにその通り。
途中、「えっ、どうなるの!?」とハラハラさせられる箇所もないではないのですが、総じて安心して読める作品です。


それにしても、こんなにも長い時間を通して変わることなく貫かれる想いって、本当にすごい。
でもこの設定、戦争という時代設定の中においてこそ生きるのかも…。
現代の平和ボケした社会では、こんな恋愛ないだろうし、小説の題材にしてもくさいだけという感じがします。
それは、少しさみしく悲しいことですが…。