tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『パラレルワールド・ラブストーリー』東野圭吾

パラレルワールド・ラブストーリー (講談社文庫)

パラレルワールド・ラブストーリー (講談社文庫)


親友の恋人を手に入れるために、俺はいったい何をしたのだろうか。
「本当の過去」を取り戻すため、「記憶」と「真実」のはざまを辿る敦賀崇史。
錯綜する世界の向こうに潜む闇、一つの疑問が、さらなる謎を生む。
精緻な伏線、意表をつく展開、ついに解き明かされる驚愕の真実とは!?
傑作長編ミステリー。

人の記憶ほど当てにならないものはないと思います。
仕事の場では、しょっちゅう「言った」「いや言ってない」の争いが起きますよね。
それを防ぐために人は文字で記録するという能力を持っているのでしょう(それでも記憶違いというものはしょっちゅうおこるものですが)。


東野圭吾さんの『パラレルワールド・ラブストーリー』は、そんな記憶の揺らぎの恐怖を描いた作品です。
会社で「記憶」に関する研究をしている主人公は、自分の持つ記憶とは異なる内容の夢を見ます。
その夢の中では、現在同棲している恋人は自分の親友の恋人でした。
そんなことありえない、と思いながらも、自分の過去の記憶があいまいになっていることに気付き、次第に恐怖感を覚える主人公。
彼の過去に、一体何が起こったのか…?


過去の記憶がなくなるというのは怖いことです。
自分の存在が信じられなくなるのと同じですから。
でも、逆につらい記憶を忘れられず背負っていかなければならないのも怖いですね。
楽しかったこと・うれしかったことだけの記憶を持って生きて行けたら楽だろうけど、そうなったら人間堕落していくだけなんだろうなと思います。
この作品に描かれているような「記憶のコントロール」はあまりするべきことではないのではと思いました。
いい記憶も、つらい記憶も、どちらもうまく共存させながら生きていける強い人間になりたいものです。