tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『理由』宮部みゆき

理由 (朝日文庫)

理由 (朝日文庫)


荒川の高層マンションで起きた一家四人殺し。
しかしそこに住んでいるはずの家族はほかの場所で暮らしていた。
殺されたのは誰か、殺人者は誰なのか。
事件はなぜ起こったのか。
家が、家族が、そして人が徐々に壊れていく。

朝日新聞連載中に読んでいたときは、やたら登場人物が多くて、法律に関する記述なんかもあって、難しい話だなあーと思っていたけど、改めて読んでみると、意外と読みやすかったです。
こんなにたくさんの、いろいろな形の「家族」を描いた作品というのも珍しいですね。
そして、どの家族もとてももろくて、でも大切なものとして描かれているのが胸にしみます。
ドキュメンタリータッチのミステリーというのもあまりない形で、なかなか事件の全貌が見えてこない点も、まるでその事件をニュースでリアルタイムに見ているようで、先が気になってどんどん読み進めました。
「おもしろかった」というよりは、「考えさせられた」というのが正直な感想です。
ちなみに、この作品を読んでいる途中で、うちの会社の取引先の小さな会社が不渡りを出し、社長さんの自宅が競売にかけられているという話を聞いて、作品のリアリティがさらに増して怖かったです…。