tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

『マリオネットの罠』赤川次郎

マリオネットの罠 (文春文庫 あ 1-1)

マリオネットの罠 (文春文庫 あ 1-1)


「私はガラスの人形と呼ばれていた」
森の館に幽閉された薄倖の美少女、都会の空白に起こる連続殺人の現場に残される謎のナイフ。
人間の輻輳する欲望を鮮かに描いた異色の長篇推理。

新年2冊目の読了は赤川次郎『マリオネットの罠』です。
赤川次郎なんて読むの何年ぶりかな??
赤川次郎にしろ西村京太郎にしろ、ああいう多作な作家さんの作品は追いかけるのがしんどい(苦笑)のでなかなか読むことがありません。
それに、彼らの作品は気楽に暇つぶし程度に読むのが正しい読み方だと思うので、普段けっこうじっくりと重めな作品ばっかり読んでいる私にはちょっと物足りなさがあって…。
面白くないわけではないのですが。


そんな私が今回なぜ赤川次郎作品を手に取ったかというと、この作品がミステリ好きにオススメの名作と名高いからなのです。
赤川次郎の初期の本格ミステリなのです。
「三毛猫ホームズ」シリーズなどのコメディータッチの作品でしか赤川次郎を知らない人がこの作品を読むとビックリするでしょう。
ユーモアなどは極力省いた、硬派なサスペンスタッチのミステリですから。


20年以上前の作品なので、少々古臭い感じもしなくもありません。
それでも、ラストに待つ意外などんでん返しはだいぶミステリに慣れた私でも、十分驚かされました。
展開もうまいので、ハラハラしながらどんどん先を読み進めたくなります。
特に最後の章は、一体何が起こるのかとドキドキしました。
いやいや、赤川次郎がこんな作品を書いていたとは知りませんでした。
いい意味で赤川次郎のイメージを覆してくれる作品です。
できればまたこういう本格ミステリも書いてほしいけど…やっぱり今の路線の方が商業作家としては売れるんだろうなぁ。


本の内容には関係ないけど、古い本なせいか、文字が小さくて最初のうちちょっと読みづらかったです…すぐに慣れましたが。