tontonの終わりなき旅

本の感想、ときどきライブレポ。

KOBUKURO LIVE TOUR 2017 "心" @パシフィコ横浜・国立大ホール (7/28)

*演奏曲に関するネタバレはありません。


コブクロの今年のツアー、私の初日は横浜遠征から始まりました。
パシフィコ横浜コブクロにとっても初めての会場。
建物のすぐそばが海で、ホールから出ると目の前に広がる広い海と空という、なんとも横浜らしい、素晴らしいロケーションでした。
ホールの内装もとてもきれいで、椅子も座り心地がよく、非常に快適にライブを楽しむことができました。
客席は横に広いという、少し変わった形のホールで、そのせいか他の会場とは音の響き方が違う気がしました。
正直な感想としては、昨年行った愛媛のひめぎんホールの方が音響は好みかな。
あの時は席も前の方だったというのもあったかもしれませんが。
今回は31列目だったのですが、思った以上にステージが近くてコブクロのふたりもバンドメンバーも全員よく見えるな、と思っていたら、前から10列目くらいまではつぶされてステージになっていたらしく、実質20列目くらいの距離だったようです。
それでもアリーナやドーム会場の20列目とは全く違い、やはりステージとの近さという面ではホールが一番ですね。


肝心のライブについては、やっぱりふたりのハーモニーは最強だなぁと。
小渕さんは高音がきれいに出ていて、ロングトーンの伸びが素晴らしかったです。
黒田さんは高音はちょっと苦しそうでしたが、そんなことも気にならなくなるくらい、低音の響きに聴き惚れました。
ふたりの歌自体はよかったのですが、個人的にはセットリストがいまひとつピンときませんでした。
演奏曲には触れませんが、なんというか、渋いところ突いてきたな……という印象です。
派手さも華やかさも意外性もマニアックさもないセットリストで、昨年の「TIMELESS WORLD」ツアーと比べるとかなり地味と言っていいかもしれません。
アルバムを引っ提げてのツアーだった昨年とは違って、コンセプトもメッセージも強く伝わってくるものはあまりなく、ちょっと物足りない感じがしました。
ただ、何が来るか分からないワクワク感はシングルツアーならではだし、1曲1曲に目を向けると、そういえば最近ライブでは歌っていなかったなぁという曲が多く、ちゃんと考え抜かれたセットリストなのだろうということは分かります。
小渕さんが「自由にやらせてもらっているので、いつものライブとは違うと感じる人もいるかもしれません」とMCで話していましたが、まさにそんな感じでした。
きっと、スルメのように噛めば噛むほど味が出てくる、そんなツアーになるような気がします。
ライブ自体も公演を重ねるごとに成長していくものですし、次回の参加までに少し間があくので、次はどのように感じるか、それを楽しみにしていたいと思います。

演出面では、今回初登場のリストバンド型LEDライトについて触れておきます。
全部で4種類の光り方がありますが、自分勝手に好きな光り方にしていいわけではなく、ステージ両サイドに置かれているライトと同じ光り方に設定するよう指示されます。
自分で設定するのがちょっと面倒くさい (ライブ中にバタバタしてしまう) のと、自分で設定する必要があるのに「制御されてる」感がするのが、好みが分かれそうなところですね。
でも、コブクロのふたりをはじめバンドメンバーもみなさんリストバンドをつけているので、やっぱり買っておいた方が一緒に楽しめるのは確かだと思います。
ライトの指示は分かりにくいかなとか忘れてしまいそうとか思いましたが、黒田さんがいつもフライングで次の光り方に変えていたので、それを真似すれば問題ありませんでした (アリーナやドームなど広い会場では見えないかもしれませんが……)。
曲の振付けや手拍子も黒田さんが先導するので、なんだかライブ中黒田さんばかり見ていたような気がします。
そういえば、私はリストバンドを腕時計感覚で左手に着けたのですが、右手 (というか利き手) に着けた方がよかったなとライブ中に思いました。
それと、購入した時にスイッチ部分にささっている絶縁用プラスチックは捨てない方がよいですね。
ライブ後もう一度させば、バッグの中で勝手にボタンが押されて光るのを防ぐことができます。
以上、僭越ながらこれからツアーに参加する方へのアドバイスでした (笑)


次は10月に大阪城ホールでの公演に参加予定です。
今回、広い会場ではどのような演出になるのかちょっと予想がつかない感じなので、楽しみです。
では、最後にMCレポをどうぞ♪


【かっこいい?】
黒田さん (以下「クロ」):今日のために髪の毛を切った黒田俊介です。どう、似合う?
客席:かっこいい~!!
クロ:かっこいい?もっと言って言って!俺の今日のモチベーションにかかわるから!
小渕さん (以下「コブ」):それはそうやな。(黒田さんに近寄り) ほら、ズボンの丈が長くてかっこいい!靴下が白くてかっこいい!スニーカーの柄がかっこいい!
クロ:いやいや小渕さんもかっこいいですよ。ちょっと待って、今考えるから。(小渕さんの全身を眺め) ……。
コブ:なんでそんな考え込むねん!
クロ:中に着てるシャツがでかくてかっこいい……?


【謎の万能薬】
クロ:いや~もう、僕はこの横浜公演、できひんのちゃうかな~と思ってました。持病が悪化して。
コブ:えっ!?
クロ:口内炎ができたんです。4個も。ヤフーニュースに「コブクロ黒田、口内炎が悪化し公演中止」とか出たら恥ずかしすぎる!だからアロエ買ってこな~って……。
コブ:ちょっと待って、やけどじゃないんやろ?なんで口内炎アロエやねん。
クロ:だって子どもの頃うちの親父よく言うてたもん、口内炎できたとかなんか怪我したとかいう時いっつも、「アロエ食うとけ」って、育ててるアロエとってバリボリバリボリって。
コブ:口内炎アロエのトゲ刺さったら悪化するんちゃうの?
クロ:アホか、あれそのまま食べるわけないやろ!
コブ:だって「バリボリバリボリ」とか言うから……。
クロ:とにかくアロエは何にでも効くんやって。ほら、俺らより上の年代の人みんなうなずいてる!
コブ:お客さんの中に皮膚科関係の人いませんか~?アロエって口内炎に効くの?
客席:○△□~!
コブ:「効く人と効かない人がいるかも~!」やって。
真偽の程は……?


【ちゃん付け呼びは怒られないの?】
話の流れで (ネタバレのため詳細は割愛) 石川さゆりさんに提供した楽曲「春夏秋冬」を歌うことになった小渕さん。
石川さんのモノマネで曲説しようとしますが、ぶっちゃけあまり似てません……。
クロ:おまえそれ、さゆりちゃんに怒られるで。
コブ:あのね、去年のライブに石川さんが見に来て下さったんですよ。それでライブ後に楽屋に来てくださって、「これ、おビール代です」って渡されたんです。演歌の人すごい!!ってびっくりした~。
クロ:俺ら19年やってるけど「おビール代」なんてもらったの初めてやったよな。しかもなんかきれいな風呂敷みたいなんに包まれてて、えっ、これそのままもらっていいの?風呂敷は返すべきなん!?ってどうしたらいいか分からんかった。


【グダグダ】
小渕さんが「春夏秋冬」を歌った後。
コブ:黒田くんも何か歌えば?
客席:(拍手)
クロ:僕中学の時にね、バスケやっててシュートをバーンって決めた時に友達の足の上に着地して思いっきり足ぐねってん。それで昨日マッサージの人来てもらって足マッサージしてもらってたら、「黒田さん、靭帯死んでますね」って言われて。僕20何年間ずっと靭帯が死んでることが判明しました。 (足を引きずって歩く)
コブ:アホか!アロエでも塗っとけ!
客席:歌って~!!
クロ:ええ~、靭帯死んでるって話したやん。
コブ:歌ってって言われてんのにMCでごまかそうとするってなんやねん!
クロ:よっしゃ、じゃああれ歌おう、秦くんの「ひまわりの約束」。
自分で言い出したのに歌詞をほとんど覚えていなかった黒田さん、客席に下りてお客さんに教えてもらってもやっぱり途中で「うにゃうにゃ~」とごまかしながら、なんとかグダグダすぎる「ひまわりの約束」のサビを歌ってくれました。
近年まれにみるグダグダっぷりだったなぁ……(笑)

『ほうかご探偵隊』倉知淳


ある朝いつものように登校すると、僕の机の上には分解されたたて笛が。しかも、一部品だけ持ち去られている。――いま五年三組で連続して起きている消失事件。不可解なことに“なくなっても誰も困らないもの"ばかりが狙われているのだ。四番目の被害者(?)となった僕は、真相を探るべく龍之介くんと二人で調査を始める。小学校を舞台に、謎解きの愉しさに満ちた正統派本格推理。

ジュブナイルミステリ叢書、講談社ミステリーランドの1冊として刊行された作品です。
子ども向けのミステリ入門書として書かれただけあって、さすがに読みやすさは抜群。
ですが子どもだけではなく、大人、それもミステリを読み慣れている人であっても、十分に楽しめるだけのクオリティがありました。


主人公は江戸川乱歩などのミステリ好きの小学校5年生。
もうこの時点で、そういえば私も小学5年生の頃江戸川乱歩作品読んでたな、ととても懐かしい気持ちになりました。
そろそろ大人向けの本にも手を出してみようか、なんてところも私と同じ。
きっと作者の倉知さんご自身が同じ経験をしてこられたんだなと思うと、一気に親近感がわきました。
そんなミステリ好きで好奇心旺盛な子どもたちが、学校内で起こった不思議なできごとの謎を解くという「探偵ごっこ」のお話が面白くないわけありませんね。
しかもその「探偵ごっこ」が、推理の過程の基本をしっかり押さえていて、なかなか本格的なのです。
起こったできごとの意味を探るのに、起こった順番がカギになっているのか、何か暗号的なメッセージが隠されているのか、全てのできごとが同一犯によるものなのか、何か手がかりになるような事柄を目撃した人はいるのか、犯人の動機は何なのか――などなど、ひとつずつ丁寧に可能性を挙げて、仲間たちで話し合って、検証して、ありえない推理をつぶしていく。
そうやって少しずつ少しずつ真相に近づいていく過程が、派手なことが起こるわけでもない地味なストーリーにもかかわらず、また探偵役が全員小学生であっても、十分頭脳ゲームとして面白いのです。


そんな楽しい探偵ごっこの結果、導き出される真相がこれまた面白い。
しっかり伏線も回収して、どんでん返しも仕込むという、本当に面白いミステリのお手本のような展開が待っています。
事件そのものはあっさりとした描写で、事件の調査や推理、そして最後の解決編にほとんどのページを割いているのがいいですね。
作者の、子どもたちにミステリの楽しさを知ってもらうんだ、という意気込みがありありと伝わってきます。
真相は「なんだ、そんなことだったのか」といささか拍子抜けする部分もありましたが、探偵役の龍之介くんがいい味を出していて、大人の読者としては「この子なかなかやるな」とにんまりさせられます。
そして、物語の最後の文章は、作者から読者の子どもたちへのメッセージです。
ミステリはもちろん、ミステリ以外にもこの世界に面白いお話がたくさんあって、子どもたちを待っています。
私も子どもの頃から今までに読んできたたくさんの物語を思い出して、この作品をきっかけにさらに読書の楽しみを広げていく可能性に満ちた子どもたちのことがうらやましくなりました。


もしも自分に子どもがいたらこんな本を読ませたいな、と思える素敵な作品でした。
ミステリの基本をしっかり押さえているので、大人だけれどミステリ初心者で何を読めばいいのか分からない、というような人にもおすすめできそうです。
☆4つ。

『僕と先生』坂木司

僕と先生 (双葉文庫)

僕と先生 (双葉文庫)


こわがりなのに、大学の推理小説研究会に入ってしまった「僕」と、ミステリが大好きな中学生の「先生」が、身のまわりで起きるちょっとした「?」を解決していく“二葉と隼人の事件簿”シリーズの第2弾。前作『先生と僕』同様、ふたりの活躍に加え、ミステリガイドとしてみなさんを愉しいミステリの世界へと導く!

こわがりの大学生・伊藤二葉が、家庭教師先の生徒で頭の切れる中学生・瀬川隼人と、日常生活の中で遭遇した謎を解く連作短編集シリーズです。
ちなみに前作のタイトルは『先生と僕』。
本作と並べて本棚に差しておいたら、どちらが1作目だったか悩んでしまいそうな紛らわしいタイトルです。
書店で買う際にも間違わないよう気をつけないといけませんね。


タイトルの「僕」とは語り手である二葉のこと。
「先生」というのが隼人ですが、隼人の家庭教師が二葉、という関係なので、一瞬「あれ?」と思ってしまいます。
実は隼人が二葉の「ミステリの先生」というのが真相です。
相当なこわがりで、人が殺される場面が出てくる小説や映画などが大の苦手なのに、大学の推理小説研究会に入ってしまった二葉に、隼人が「怖くないミステリ」を紹介してくれます。
そのミステリは実際に現在の日本で入手できるものばかりなので、読者も二葉と一緒に隼人が紹介してくれる作品を楽しむことができる、というのがこのシリーズの最大の特徴です。
私は二葉とは違い殺人事件を扱うミステリも大好きですが、日常の謎など人が死なないミステリも大好物なので、隼人がどんな作品を紹介してくれるかが毎話とても楽しみでした。
自分の知らない作品が紹介されると読みたい本が増えるのがうれしいのはもちろん、すでに知っている作品だったとしても、「そうそう、あの作品面白かったよね」と隼人に共感できてうれしいのです。
いえ、実際のところは作者の坂木司さんへの共感なのですが、単なるブックガイドではなく小説という形で作家さんのおすすめ本を教えてもらえるのが、フィクション好きにとっては何よりうれしいことでした。


そして、本シリーズの良さは、この作品自体が「怖くないミステリ」として十分面白いということです。
安楽椅子探偵的な部分もある隼人ですが、実際に「現場」に出かけて行って謎解きの手がかりをつかむということもやっており、推理だけでなく「捜査」の面も楽しめます。
さらに、ミステリ好きにとっては隼人のミステリ論もとても興味深いです。
特に本作で隼人が語る、「日常の謎は人が死なない優しい話と思われがちだが、案外シビアで意地悪な話も多い」という言葉には、全くそのとおり!と激しく首を振る勢いで納得しました。
謎解きの結果、人間の悪意や嫌らしい一面が露わになるという話が、日常の謎ミステリには案外多いと思います。
そして、本シリーズ自体がそういうタイプの作品なのです。
本作でも大学生の就職活動やごみ問題など、社会的なテーマに斬りこんでおり、まるっきりの悪人は少ないものの、ちょっと嫌な感じのする人物がたびたび登場します。
かなり苦みのある味わいの物語が多いのですが、それでも読後感が悪くないのは、二葉と隼人の人柄のおかげでしょうか。
しっかりしすぎなくらいしっかりしている隼人の中学生らしい一面にほっこりさせられたり、隼人とは逆に大学生にしてはちょっと頼りない感じが否めない二葉の、心優しい性格にほっとしたり。
ふたりともこれからたくさんの人に出会い、たくさんの本を読んで、まっすぐ成長していってほしいななどと、保護者のような気持ちになりました。


本作には、最初の話から最後の話まで共通して登場する「怪盗」のようなちょっと謎めいた女の子が出てきます。
彼女のもっと詳しい人となりや、二葉との関係が気になるので、ぜひ3作目を出していただきたいです。
続編が出るとしたらタイトルがどうなるかも楽しみ。
☆4つ。


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